私は人事なので、従業員さんが出産される場合、一通り説明をします。
でも、知人からも質問を受けることが多いんです。
「会社で説明してもらったけど意味が分からない」というケースが多いです。
実際にはほとんど会社が手続きをしてくれるので、放置していても何となく受給できるのですが、たまに人事担当者が申請を忘れていることがあるので、やはり給付金については一通り理解しておいた方が良いと思います。
特に派遣社員の場合は、こちらから申し出ないと手続きをしてもらえませんので、制度を良く理解して派遣会社の総務窓口や営業担当の方に申し出ましょう。
大手の派遣会社なら手続きに慣れているので安心だと思います。
一番大きな3本柱の給付金はこれ
この3つの給付が、生活の支えとなる大切なものです。
一つ一つご説明していきたいと思います。
出産育児一時金
後に記述する「直接支払制度」がある為、出産育児一時金を請求する方は少なくなりました。
✿出産育児一時金の支給金額について
妊娠4か月以上で出産した場合は、1児につき42万円が支給されます。
この42万円というのは、産科医療補償制度に加入している産院での出産に限られ、適用外の場合は40万4千円が支給されます。
私がこれまで出産育児一時金の手続きをした中でいくと、対象外だった出産は海外での出産のみで、国内では1件もありませんでした。
海外では産科医療補償制度が適用されませんから、当然のことと言えます。
ちなみに、12週~22週未満の分娩(死産・流産含む)の場合は、産科医療補償制度に加入している産院であったとしても、40万4千円の支給となります。
※産科医療補償制度・・・生まれた子供が重度の脳性麻痺だった場合に、補償金の支払いがあったり、原因を分析してもらえる制度です。
✿直接支払制度について
今はほとんどの産院でこの直接支払制度があります。
①窓口での支払いを抑えたい場合
病院とこの「直接支払制度」の取り交わしを文書を締結すれば、出産費用が42万円までであれば支払いはありません。
(超えた場合はその分だけ支払い、42万円に満たない場合は差額を保険者に請求します。保険者というのは、健康保険組合や協会けんぽなどのことです。)
②カードのポイントを貯めたい場合
必ずしも直接支払制度を利用する必要はなく、例えばクレジットカードが使える産院であればカード払いにしてポイントを貯め、後から保険者に対して出産育児一時金を請求する方法もお得です。
ちなみに・・・、保険者への請求というのは、会社員の場合は人事に依頼すれば、書類を取り寄せてくれますので、自分で全てをやる必要はありません。
出産手当金
出産手当金というのは、産前42日(多胎妊娠98日)~産後56日に支給される給付金のことですが、ではいつからいつまでのことなのでしょうか。
✿産前産後休暇について
・・・出産日の42日前~出産の翌日から56日間のことです。
産休に入る前に、予定日からカウントして産休日が決定されますよね。
その為、出産日が早まった場合は、出産日から42日前を計算しますから、産前が早まる訳です。
でも、実際にはどうでしょう?
産前が早まっても既に産休はスタートしています。早まったその日に出産手当金以上のお給料が出ていると出産手当金はもらえません。
一般的に、産休開始日ぎりぎりまで勤務しているか、有給休暇を使ってお休みしているかのどちらかのケースが多いのではないでしょうか。
これが、いわゆる「早く生むとその分出産手当金の日数が少なくなる」の原因です。
逆に、出産が遅くなれば当初の予定日から実際の出産日までの日数分が多く支給されることになります。
難しいでしょうか?
そうですね、例えば・・・、
2018年8月8日出産予定の人がいたとします。
予定では、
①産前休業期間: 2018年6/28~8/8まで
②産後休業期間: 2018年8/9~10/3まで
となりますよね。
<8/4に生まれた場合>
4日早く生まれたケースです。
支給される出産手当金は、
6/24~9/29までになります。(※6/24~27は給与があれば不支給)
※本来の産休スタート日は6/28でしたから、6/24~27まで仕事をしてお給料が出ていたり、有給休暇を取得していた場合はこの部分だけ不支給となります。)
そして、その翌日9/30から育児休業期間となる訳です。
<8/10に生まれた場合>
2日遅れて生まれたケースです。
支給される出産手当金は、
6/28~ 10月5日までになります。(※2日遅れた分プラスしてもらえる)
そして、その翌日10/6から育児休業期間となる訳です。
上記で分かるように、実際の出産日が決定しないと育児休業開始日は分かりません。
なお、双子などのように多胎妊娠の場合の産前は、42日ではなく98日になります。
✿出産手当金の支給金額について
正確に言うと、
(支給開始日以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30)×2/3です。
ややこしいでしょう?
社会保険に加入している人は、誰でも標準報酬月額というものが設定されています。
計算方法は、収入(残業代や交通費込)で計算するのですが・・・、一番メジャーなのは4月~6月のお給料で算定する定時改定ではないでしょうか?
良く、4月~6月はあまり残業をしてはいけないと言われているのがこれです。
でも・・・、確かにこの期間沢山残業をすると社会保険料は上がります。
と同時に、こういう出産手当金や傷病手当金などの給付も上がるのです。
つまり沢山もらえるということになります。
保険料が高いのは一概に損ばかりではないんですよね。
自分の会社が加入している保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)のHPを見ると、等級表(保険料額表)が載っているのではないでしょうか。
毎月お給料から天引きされている保険料をこの等級表に当てはめると、人事に聞かなくても自分の標準報酬月額が分かりますよ。
最近ややこしくなり、1年間の平均を取って出産手当金の給付日額を計算するようになりましたが、まあ、大幅な固定的賃金の変動(交通費の変更や昇給)などが無い限りは1年平均してもそのままですからね。
今現在の標準報酬月額を調べて、それを30で割ったのが日額ですから、その計算でおおよその出産手当金の金額が分かると思います。
育児休業給付金
これまでご説明した「出産育児一時金」や「出産手当金」と違って、支払元はハローワークになります。
この育児休業給付金が、最大2年までもらえるようになりました。
✿育児休業期間について
私の会社の社員さんもそうですが、正社員であっても保育園に入れない事って、ざらにあるんです。
でも、子供が1歳6ヶ月になってしまったら、今までは仕方なく会社に戻らないといけませんでした。
その場合どうするか?
無認可保育園か父母に預けるケースのどちらかでしたね。。。
おじいちゃんおばあちゃんも大変です。
でも、法改正で、2年まで再延長することが可能になりました。
✿育児休業給付金の支給金額について
育児休業開始から6ヶ月間は、賃金日額×支給日数の67%が支給されます。
その後は、67%⇒50%になりますので、大体お給料の半分くらいと思っていれば良いと思います。
この賃金日額は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金で計算しますから、私のように妊娠中でも激務で残業が続いた場合は残業代の支給が多いですから、その分育児休業給付金の支給額も多くなるという訳です。
それぞれの受給要件について
ちなみに、産前産後休業期間(出産手当金受給期間)も、育児休業期間(育児休業給付金受給期間)も、社会保険料(健康保険・厚生年金)については免除となります。
私が出産した時代は、産前産後は社会保険の支払い義務がありましたから会社から請求がきましたが、今は両方免除になりました。このメリットは大きいですよね!
そうそう、派遣社員も育児休業を取得することは可能です。
ただし、1年以上雇用されていないとダメですから、同じ派遣会社で1年以上雇用されていることが必要になります。
1年以上勤務していて就業中に妊娠した場合は、派遣会社に申し出ると産休育休の手続きを取ってもらえます。
通常派遣社員は3ヶ月ごとの契約更新ですが、産休育休に入ると専用の契約書を派遣会社と締結しますから、「育児休業中に雇用継続が更新されないことが明らかでないこと」という条件には該当しません。
その他もらえるお金について
✿児童手当
(居住地の市区町村から、公務員は職場からもらえる。手続き必要。)
✿児童扶養手当
(ひとり親家庭の場合、居住地の市区町村からもらえる。手続き必要。)
上記の2つは、子供が生まれたらすぐに自分で手続きをしましょう。
遅れてしまうと、その間もらえなくなってしまいます。
さて、ややこしい給付金手続き、いかがでしたでしょうか。
それぞれに申請期限があるものが多く、忘れてしまうともらえなくなってしまいます。
会社任せにするのではなく、制度を理解して確実に受給したいですね。