長年人事部にいると、従業員さんの知識も変わってきているな~と感じます。
ひと昔前は、「社会保険料って何ですか?」という質問が普通でした。
「健康保険と厚生年金のことですよ」と答えても、違いが分からない方も沢山おられました。
でも、時代が変わりインターネットが普及し、皆さんネットから情報を得られるようになりました。
「どうやったら健康保険料が下がるか?」を良くご存じで、「4月~6月は残業しない方がいいんですよね!!」と自ら言ってこられる方も多くなりました(笑
ただ、社会保険料が高いことは本当にデメリットだけなのでしょうか?
社会保険料とは
冒頭でも記載しましたが、
✿健康保険料(介護保険料含む)
✿厚生年金保険料
の総称のことになります。
こちらは私の12月分のお給料明細です。
年末調整の還付がありましたので、これでも普段より少し多めです。。。
この中で、
✿健康保険・・・11,048円
✿厚生年金・・・17,385円
とありますね。
これが社会保険料のことです。
その下に雇用保険料の記載もありますが、これは料率が決まっているものなので、下げることはできません。(正確には雇用保険料は労働保険と言います。)
毎月税金のように引かれていく保険料。
これをどうやって下げるかで悩まれている方が多い様です。
私もシングルマザーですので、お気持ちは痛いほど分かります。
社会保険料を下げる方法
皆さん良く耳にされると思いますが、社会保険料を下げる方法は、
✿4~6月の総支給額を少なくする。
つまり、残業を抑えるのが一般的です。
✿交通費を少なくする。
社会保険料は、総支給額で計算します。
つまり、基本給+手当+交通費+残業代です。
全てを合算した総支給額を等級に当てはめて算出しますので、交通費が少ない方が社会保険料は安くなります。
職場の近くに住んだり、自転車通勤が現実的ですね。
自分で操作できるのはこの辺が現実的だと思います。
後は、✿保険料が安い保険者を選ぶというのもありますが、保険者を考えて会社を選ぶ人はまずいないと思います。
(保険者というのは、協会けんぽや健康保険組合のことです。)
主に中小企業が加入している協会けんぽも、都道府県によって料率は違います。
この料率ですが、裕福な保険者であれば料率は低いですし、逆に赤字の保険者であれば料率は高くなります。(そうしないと潰れます)
一般的に、加入者の平均年齢が高くなればなるほど医療費がかかりますので、運営は厳しい様です。
IT関連の健保などは、平均年齢が圧倒的に低いですから、裕福な傾向にあります。
社会保険料が高いことによるメリット
ものすごく分かりやすい例で言うと、今回の新型コロナに感染したとします。
そうすると、傷病手当金が支給されますね。
傷病手当金の計算式は、こうなっています。
出典:協会けんぽホームページ「傷病手当金」
ややこしいですよね。
少し解説しますと、ここでキーになってくるのが「標準報酬月額」です。
入社時決定(会社に入る時)や定時決定(4~6月)などによって、お給料の総支給額を等級表に当てはめて標準報酬月額が決定されています。
では、等級表はどうやって確認したら良いのでしょうか?
・・・これは、各保険者のホームページを確認するのが一番早いです。
私の場合、協会けんぽの東京支部が保険者です。
保険者が分からない方は、健康保険証を確認してみましょう。
一番下に保険者が記載されています。
ちなみに、協会けんぽ東京支部の等級表はこちらです。
(注:協会けんぽは支部ごとに等級表が異なります。)
※協会けんぽホームページ「東京支部保険料額表」
私の健康保険料は、11,048円です。(給与明細より)
等級表の中で、11,048円に該当する等級を探します。
40歳未満の方は、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」を確認します。
40歳以上の方は、「介護保険第2号被保険者に該当する場合」を確認します。
私は40歳以上ですので介護保険第2号被保険者になります。
(つまり、介護保険料を徴収される人ということです。)
11,048円が該当する標準報酬月額は、190,000になりますね。
これで、自分の標準報酬月額が分かりました。
さて、傷病手当金はこの標準報酬月額で計算します。
傷病手当金は日ごとに支給決定されますので、30で割ったものに2/3をかけます。
以前は、受給開始時の標準報酬月額で計算していたのですが、法改正があり1年間の平均を取ることになりました。
ただ、大きく変動が無ければ、直近の標準報酬月額が分かっていれば大体の支給額は出せると思います。
ここまで計算してみてお分かり頂けたと思いますが、健康保険料は医療費だけではなく保険給付という側面もあります。
新型コロナに感染すると傷病手当金の申請をすることになると思いますが、標準報酬が高いほど給付も大きくなります。
厚生年金保険料も同じで、毎月の保険料が下がると将来もらえる厚生年金もそれだけ少なくなるということです。
まとめ
新型コロナは誰もが予想していなかった事態です。
ギリギリの生活をしていると、予想外の出来事に対応ができません。
何かが止まった時の補償を自分自身で確保しておかないと、生活ができなくなりますよね。
新型コロナにおいても、ひとり親への補償は特にありませんでした。
だからこそ、傷病手当金などの収入確保は、とても大切です。
失業した際の失業保険も、総支給額で計算しますので、交通費や残業代が多ければその分給付額も多くなりますよね。
普段からいざという時の為に知識を持っておくことが大切だと思います。